第60章

葵はそのファイルを見つめ、ゆっくりと指先に力を込めた。

武治の声は極めて落ち着いていた。

「葵、本当にこのまま続けるつもりか?」

葵は出生記録から目を離さず、その表情は氷のように冷え切っていた。

傍らにいる奈央は、すでに泣き出していた。

彼女は立ち上がって葵の前に歩み寄り、声を震わせた。

「葵、もういい、もう十分よ。これ以上調べたら、水原家は終わりよ。お兄ちゃんまで巻き添えになってしまうわ」

悟がすかさず口を挟む。

「母さん」

奈央は振り返って彼を見た。

「悟、あなたまだこの子を庇うの? 水原家にもしものことがあったら、あなたの会社も、これまでの努力も、全部道連れになるの...

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